高コレステロール血症とは

血液中の脂質は、コレステロールと中性脂肪が含まれます。コレステロールは細胞膜や脂肪の消化に必要な胆汁酸などに成分になり、体にとって大切な成分です。コレステロールには二つの種類があります。LDL-コレステロールとHDL-コレステロールです。LDL-コレステロールはその値が高いと動脈硬化を進め、心血管病(狭心症、心筋梗塞や脳梗塞)が起こりやすくなるため、悪玉コレステロールと呼ばれ、HDL-コレステロールは全く逆の効果を持つために、善玉コレステロールとも呼ばれています。

コレステロールは体にとって大切な成分ですが、基準値を超えると心血管病を引き起こします。LDL-コレステロールの基準値は140から160以下です。数々の臨床研究により、LDL-コレステロールはその値が高くなると、心血管病を引き起こしやすくなり、薬を使って正常値に近くなると、そのリスクが低減することがよくわかっています。その薬はスタチンと呼ばれています。血液中のLDL-コレステロールは肝臓にあるLDL受容体を介して肝臓に取り込まれ代謝(分解)されます。スタチンと言う薬はLDL受容体を増やすことで多くのLDLを肝臓に取り込みLDL-コレステロール値下げます。それ以前の薬と違ってその効果は抜群でした。そのため、LDL受容体の発見者はノーベル賞を受賞しましたし、スタチンの発見者はノーベル賞候補者になりました。

また、近年、腸管からコレステロールが吸収する過程を阻害する薬も開発されています。現在では、この薬とスタチンを併用することでほぼ理想的にLDL-コレステロールを下げることができ、心血管病の予防に大きく貢献しています。
それでは、LDL-コレステロールはどのような値が適当でしょうか。一律には決まっていません。病気のない方は、120-140以下、女性で閉経後の方は、160-180以下、糖尿病や高血圧症を持っておられる方は、100以下、すでに狭心症や心筋梗塞、脳梗塞を患っておられる方は、厳しく、80以下が目安と考えられています。
高LDL-コレステロール血症について、もう一つの大事な側面は遺伝的、体質的側面があるということです。家族内にLDL-コレステロールが高い方が多くおられる家系があり、家族性高コレステロール血症と呼ばれています。日本人に多く、一度家族を見渡してください。

脂質異常症とは

高コレステロール血症とともに、脂質異常症も動脈硬化を進め、心血管病を起こりやすくします。脂質異常症は中性脂肪(トリグリセド)が高くなり、HDL-コレステロールが低くなる状態です。中性脂肪は食事中の油(脂肪)が消化吸収され、体の中で、油(脂肪)に合成されたものです。皮下脂肪、内臓脂肪、脂肪肝などです。中性脂肪の値は、食事の内容に大きく左右され、食後(特に油に富んだ食事)は高くなります。朝食前の値は150以下です。
HDL-コレステロールの値は、男女の差はありますが、50-60以上です。
中性脂肪をさげる薬は、スタチンほど効果はありませんが、開発されています。効果のある人と、効果があまり見られない人に分かれるようです。低いHDL-コレステロールを上げる良い薬は残念ながらまだ開発されていません。
この脂質異常症は糖尿病や肥満、特に内臓脂肪蓄積(メタボーリックシンドローム)に伴いやすいことがよく知られています。ですから、脂質異常症の治療は、糖尿病を良くすること、肥満を是正することが大切です。