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糖尿病教室
メタボリックシンドロームって何?
1.はじめに
2. メタボリックシンドロームという言葉ができるまで
3. 内臓脂肪型肥満って何?
4. どのような人がメタボリックシンドロームを持っているのでしょうか
5. 人類を救ってきた脂肪組織のさらに大切な役割
6. 日本人のメタボリックシンドロームの頻度は?
心筋梗塞や脳卒中のリスクはどれほど高まるのか?
7. キーワードは生活習慣の見直し
8. おわりに
日本人のメタボリックシンドロームの頻度は?
筋梗塞や脳卒中のリスクはどれほど高まるのか?
幸い、この疑問には国立循環器病センターの予防検診部の広範な調査の結果から答えることができます。吹田市の市民の方を対象にした「吹田研究」と呼ばれる疫学研究で、アメリカのフラミンガム研究のいわば日本版です。これは都市型疫学研究として貴重なものです。
吹田研究の一環として、国立循環器病センターでは平成元年度から4年度まで健康受診された6,457名を対象に、メタボリックシンドロームを持っている人の頻度を調査しました。用いた診断基準は先に説明しました、内臓脂肪型肥満を必須項目とする日本の基準<表>です。
<図7>は男女別年代別にメタボリックシンドロームを持っている人の割合を示したものです。70歳代の男性を除いて、年代と共にその割合が男女とも増えています。60歳代の男性で23%、女性で7%の人がメタボリックシンドロームの病態を持っていることがわかりました。
図7 新しい診断基準で検討したメタボリックシンドロームの有所見率(吹田研究)
男性に比べて、女性の頻度が低いのは、先に説明しましたように内臓脂肪がたまってくるのに、ストレスや男性ホルモンの影響が大きいためと考えられますが、さらにメタボリックシンドロームの診断基準が影響していることも否定できません。
さらに、これらの人の中で心筋梗塞や脳卒中を起こしたかどうかを追跡した結果、メタボリックシンドロームを持っている人は、脳卒中に1.7倍、心筋梗塞に2.4倍なりやすいことが明らかになりました。興味深いのは、メタボリックシンドロームの病態(先に触れた肥満、境界型糖尿病、脂質代謝異常と高血圧)を全く持っていない人を基準にすると、これらの病態を一つずつ多く持った人はさらにリスクが高まることでした<図8>。
図8 メタボリックシンドロームは心筋梗塞と脳卒中にかかるリスクを高めます。興味あるのは、メタボリックシンドロームを構成する病態(リスク項目)が、一つずつ増えるとそのリスクが高まることです
このことを考えると、私がこのシリーズの「糖尿病と動脈硬化」(48、49号)で触れましたように、代謝のシステムはお互いに密接に関連しており、またその乱れは相乗的に循環器病の発症や進展に結びついてきます。そして、老化がさらに拍車をかけることになります。
私たちはメタボリックシンドロームの臨床や研究を通じて、循環器病の発症や進展には、代謝のシステムの乱れと老化が重要な役割を果たしていることを改めて実感しました。今後、循環器病の予防はきわめて重要な課題ですが、今まであまり重点的に取り上げられなかった、これらのテーマを深く掘り下げる必要があります。