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糖尿病教室
メタボリックシンドロームって何?
1.はじめに
2. メタボリックシンドロームという言葉ができるまで
3. 内臓脂肪型肥満って何?
4. どのような人がメタボリックシンドロームを持っているのでしょうか
5. 人類を救ってきた脂肪組織のさらに大切な役割
6. 日本人のメタボリックシンドロームの頻度は?
心筋梗塞や脳卒中のリスクはどれほど高まるのか?
7. キーワードは生活習慣の見直し
8. おわりに
どのような人がメタボリックシンドロームを持っているのでしょうか
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の過剰な蓄積が基になることを説明しました。このことを踏まえて、2005年度にメタボリックシンドロームの診断基準が提唱されました
<図3>。
図3 新しい診断基準とともによく使われる診断基準です。
この基準では腹部肥満は必須項目にはなっていません.。
内臓脂肪の蓄積は、診療の現場や検診では、おへその周りの周囲径(ウエスト径)で判断します。新しい基準では日本の男性は85cm以上、女性は90cm以上あると、内臓脂肪型肥満と診断されます。
なぜこの数値になっているのでしょうか。もともと診療の現場では、内臓脂肪の蓄積はCTスキャンでおへそのレベルを測定し判断していました。そして、おなかの中の脂肪の蓄積が100c㎡以上だと糖尿病や高血圧などの生活習慣病になりやすいことが分かったのです。この100c㎡に対応するウエスト径がこの数値であると決められました。
この基準では、内臓脂肪型肥満があることが必須項目で、それに加えて<表>に示すように (1)中性脂肪が高いことや善玉のコレステロールが低いこと (2)血圧が高いこと (3)空腹時の血糖が高いことのうち2項目を満たせば、メタボリックシンドロームを持っていることになります。脂質代謝異常は一つでも持っていればそう診断されます。
<表> ウエスト周囲径で判断した内臓脂肪の蓄積が必須項目になっています。
昨年、ほぼ同時期に国際的な基準も提唱されました。この基準も内臓脂肪型肥満を必須項目とする点では、日本の基準と同じですが、ウエスト径についてはそれぞれの国の基準にまかせるとしています。 この数値を見られた方は一つ疑問に思われたことがあると思います。すでに多くの国でウエスト径の基準が決められています。その中で、ウエスト径の基準が、男性に比べて女性が大きいのは日本の診断基準だけです。確か、女性のウエストはもっとスマートでしたね。今後、多くの調査によって何cmのウエスト径が、内臓脂肪面積の100c㎡に対応するか、また心筋梗塞や脳梗塞になりやすいのかが明らかになってくると思います。そのような検討の後、よりよい診断基準が提唱されることでしょう。 また、2002年に提唱された診断基準<図3>もよく使われています。違いは腹部肥満を必須項目としておらず、5項目を同じ重みでとらえていることです。2005年の新しい診断基準は科学的に一歩踏み込んだということでしょうか。 さて、この新診断基準に基づき、メタボリックシンドロームかどうかチェックしてみましょう。<図4>をご覧ください。
図4 メタボリックシンドロームの典型例
この人の内臓脂肪面積はCTスキャンで調べると229c㎡、内臓にかなり脂肪がたまっているばかりでなく、境界型の糖尿病であり、中性脂肪(トリグリセライド)が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低く、高血圧を持っています。また、尿酸も高いことがわかります。
これらのことはすべて動脈硬化を進める因子ですが、先に説明しましたように、内臓脂肪組織に脂肪がたまった場合は、脂肪細胞の機能異常によりインスリン抵抗性(筋肉や肝臓でインスリンの働きが低下している状態です。その結果、血液の中のインスリンが高くなります)やアディポサイトカインの分泌異常が生じます。つまり、単に動脈硬化の危険因子が重なった病態ではないわけで、そのことをしっかり理解する必要があります。