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糖尿病教室
メタボリックシンドロームって何?
1.はじめに
2. メタボリックシンドロームという言葉ができるまで
3. 内臓脂肪型肥満って何?
4. どのような人がメタボリックシンドロームを持っているのでしょうか
5. 人類を救ってきた脂肪組織のさらに大切な役割
6. 日本人のメタボリックシンドロームの頻度は?
心筋梗塞や脳卒中のリスクはどれほど高まるのか?
7. キーワードは生活習慣の見直し
8. おわりに
内臓脂肪型肥満って何?
メタボリックシンドロームが起こる土台となっている内臓脂肪型肥満は、おなかの中に過剰に脂肪がたまることなのですが、これは「脂肪が内臓脂肪組織にたまる」ことを意味します。回りくどい言い方になりましたが、内臓脂肪型肥満が、糖尿病や動脈硬化をなぜ引き起こすかを考える場合、大切なことです。
内臓脂肪組織は後に説明しますが、私たちの体にとって大切な生理活性物質を産生・分泌し、また必要に応じて脂肪を合成し分解しています。ですから、内臓脂肪組織で産生され、分解された脂肪酸や「アディポサイトカイン」(「アディポ」は「脂肪の」という意味で、上に述べた生理活性物質を総称してこのように言います)は、門脈という静脈を通じて肝臓に行きます。肝臓は、脂肪肝や糖尿病などメタボリックシンドロームと密接に関係した病気を引き起こす臓器ですから、内臓脂肪の働きが異常になったとき、直接影響を受けます。
内臓脂肪組織は他にも際立った特徴を持っています。皮下脂肪組織に比べ、活発に脂肪を合成し、分解するので、美食、過食をすれば、すぐに脂肪がたまりますし、運動やダイエットをすると最初に内臓脂肪が落ちてきます。また、女性に比べて男性の方がたまりやすく、ストレスがかかると増えてきます。つまり内臓脂肪はカテコルアミン(ストレスを受けたときに分泌される、血管を収縮させる物質)に対する反応性が強く、男性ホルモンや副腎皮質ホルモンに対する感受性も高いことが知られています。
また、内臓脂肪組織は、昔は外敵に対する防御システムであったとも言われています。ですから、社会的責任が大きくなり、ストレスが増え、お付き合いで美食の機会が多くなり、運動不足になった中年男性ほど内臓脂肪型肥満に最も近いと言えます。
一方、女性ホルモンは、男性ホルモンとは対照的に、皮下脂肪を蓄える作用があります。女性の出産、育児というライフスタイルに適合しているのです。また、内臓脂肪とは反対に、皮下脂肪はたまりにくいが、いったんたまるとなかなか取れません。飢餓や寒冷の歴史を生き延びていくためには、皮下脂肪に効率よくエネルギーを蓄える必要があったからです。
つまり、脂肪組織は私たちの生存にとって不可欠なのですが、現在の過食、美食や運動不足、ストレスのために内臓脂肪が過剰にたまる結果になり、メタボリックシンドロームが起こり、さらに動脈硬化が進みやすくなっています。その意味で、メタボリックシンドロームは文明病なのです。