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糖尿病教室
メタボリックシンドロームって何?
1.はじめに
2. メタボリックシンドロームという言葉ができるまで
3. 内臓脂肪型肥満って何?
4. どのような人がメタボリックシンドロームを持っているのでしょうか
5. 人類を救ってきた脂肪組織のさらに大切な役割
6. 日本人のメタボリックシンドロームの頻度は?
心筋梗塞や脳卒中のリスクはどれほど高まるのか?
7. キーワードは生活習慣の見直し
8. おわりに
メタボリックシンドロームという言葉ができるまで
こメタボリックシンドロームとは、肥満、とくに内臓脂肪の過剰な蓄積、つまリ「内臓脂肪型肥満」を基にして、境界型糖尿病、脂質代謝異常、高血圧、脂肪肝などの病気が、ひとりの人に重なり合って起こってくる病態(疾患)のことです。
現在、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧を持っておられる人は多いのですが、メタボリックシンドロームはこれらの病気が単に重なり合ったのではなく、内臓脂肪型肥満が“土台”もしくは“下地”になって生じる点が重要です。つまり、これらの病気を引き寄せてくる共通の基盤があり、それが内臓脂肪型肥満だという考え方です。言い換えると、糖尿病や高血圧を同時に持っていても、おなかの中に脂肪がたまっていない人は、メタボリックシンドロームとは言えません<図1>。
図1
メタボリックシンドロームは内臓脂肪型肥満をもとに、境界型糖尿病、脂質代謝異常、高血圧がひとりの人に重なって起こり、動脈硬化を進めます。
注意していただきたいのは、コレステロールが高いことはこの病態のなかには含まれていないことです
メタボリックシンドロームが、心筋梗塞や脳卒中の危険因子として浮上してきたのには歴史的な経緯があります。第二次世界大戦後、一つの大規模な疫学研究が行われました。疫学研究というのは、ある地域の多くの住民を対象に健康診断、健康調査を行い、どのような人が脳卒中や心筋梗塞などの循環器病や、がんになりやすいか、またどのような生活習慣を持っている人がそのような病気になりにくいかを検討する学問です。
この研究は「フラミンガム研究」と呼ばれ、大きな目的は、動脈硬化が進むことによって起こる心筋梗塞や脳卒中などの病気の危険因子を明らかにし、それらの因子を管理、制御して心筋梗塞や脳梗塞などを予防することでした。その結果、喫煙、高血圧と並んで、コレステロール、とくにLDL-コレステロール(悪玉コレステロールと呼ばれています)の高いことが、心筋梗塞の危険因子であることが明らかになりました。
その後、血液中のコレステロールを下げるため、官民一体となった啓発運動が行われ、現在ではアメリカの若い人のコレステロールの値は、日本人の値よりも低くなっています。しかしながら、心筋梗塞で亡くなる人は、期待していたようには減少しませんでした。
その理由は、肥満と糖尿病が増加したからです。私たちは、アメリカは昔から肥満大国、糖尿病大国と思いがちですが、実際、肥満の増加が深刻になってきたのは1990年からです。肥満の増加と期を一にして、糖尿病も増加してきました。それ以後は、肥満と糖尿病の増加は社会的な問題になっており、日本でも同様な増加傾向をたどっています。
当然、肥満と糖尿病に密接に関連し、心筋梗塞の危険因子になる病態が探索され、その結果、「メタボリックシンドローム」がクローズアップされてきたのです<図2>。
図2
メタボリックシンドロームはそれだけで動脈硬化に基づく病気を引き起こします