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糖尿病教室
糖尿病の食 "テーラーメード食事療法" のすすめ
1.はじめに
2. 炭水化物制限食との出合い
3. 栄養素の代謝を考える
4. インスリンの働きと炭水化物制限食の関係は
5. 理にかなっている炭水化物制限食
6. 炭水化物制限食の考えに落とし穴はないのか
7. 炭水化物制限食の要点‐糖の代謝から脂肪酸の代謝への変換
8. 糖尿病食としての地中海食
9. 糖尿病食としてのエビデンス
10. おわりに
理にかなっている炭水化物制限食
糖尿病の病態、つまり高血糖をきたす原因・要因を考えてみましょう。糖尿病の方はインスリンの分泌が悪いか、インスリンの働きが低下して糖をうまく処理できないので、血糖が高くなります。
糖尿病が軽い場合は、食後の血糖だけが高くなりますが、糖尿病が進むと食後の血糖の上がり方がより強くなるとともに、空腹時の血糖も高くなります。血液中に糖がよどんだ状態は、血管にダメージを与え、細い血管が障害されたり、動脈硬化を進めたりします。
ですから、インスリンの分泌やインスリンの働きが低下している糖尿病の方は、炭水化物(糖質)を取るのを極力控え、食後の高血糖を抑え、その代わりに、脂肪やたんぱく質を取り、それを燃やしてエネルギーを産生して、活動に備えることは理にかなっています。この食事療法には大きな利点があります。インスリンを節約できることです。
膵臓(すいぞう)のβ細胞からのインスリンの分泌を刺激するのはブドウ糖だけです。糖質を多く取り、食後の血糖が高くなると、それだけインスリンの分泌が高まります。このように血糖に応じてインスリンが分泌されることを「インスリン反応」と呼ぶことにします。
この食事療法では食後に血糖が高くなりませんから、インスリン反応は高まらず、膵臓のβ細胞に負担をかけません。
糖尿病の薬の一つスルフォニル尿素剤(SU剤)は、β細胞を刺激して無理にインスリンを出す薬ですから、β細胞が弱っている糖尿病の方には使いたくない薬です。
炭水化物制限食はβ細胞の負担を軽くしますから、SU剤を減らすか、中止できる場合があります。同じ理由で、インスリンを打っておられる方には量を減らすことができますし、場合によっては打たなくてすみます。
他にも利点があります。最近、食後に血糖が高くなることは、動脈硬化を進めたり、心筋梗塞(こうそく)を起こすリスクになると言われています。だから炭水化物制限食は動脈硬化から起こってくる病気を予防できる可能性があります。
最後の利点は、低血糖を防ぐことです。食後の血糖が高くならないので、膵臓のβ細胞を刺激する薬やインスリンを減らせるからです。糖尿病の患者さんにとって低血糖はいやなものですから、この療法はありがたいものです。