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糖尿病教室
糖尿病と動脈硬化(後編)
1.はじめに
2. メタボリックシンドロームを早く見つけるには
3. 糖尿病の人はいくつかの動脈硬化危険因子を持っています
4. 血管合併症予防のポイント
5. 炭水化物(糖質)制限食の勧め
6. 習慣になった運動は糖尿病を予防し、良くします
7. 糖尿病を治す
8. 代謝(メタボリズム)のシステムに即して
9. 「色即是空」というバランス
代謝(メタボリズム)のシステムに即して
糖尿病を治し、動脈硬化が進むのを防ぎたいという思いで、いろいろ説明してきました。しかし、一つ大きなモチーフ(主題)があったことに気づきます。
糖尿病と肥満は、私たちの体にとって最も微妙な代謝の仕組みにバランスが取れなくなって起こります。糖と脂質の代謝とエネルギーの代謝です。代謝(メタボリズム)というのは、種々の工夫されたネットワークが組み合わさったシステムで、糖や脂肪の量が適正に保たれているということです。代謝は、体内の環境を一定に保とうとする「恒常性」(ホメオスターシス)を維持する仕組みであるとも言えます。
この仕組みの中で大切な働きをするプレーヤーがいます。古くから知られているプレーヤーはインスリンです。インスリンは血糖を正常に維持するのに最も基本的な働きをしますし、糖尿病は慢性的なインスリンの不足によって起こってきます。
また、近年の医学の進歩で、いくつかの新しいプレーヤーが登場してきました。「前編」で触れた「レプチン」(体脂肪の量を監視しているホルモン)、「アディポネクチン」(糖や脂質の代謝を調節しインスリンの働きを調節している物質)、「AMPキナーゼ」(糖を取り込み、脂肪酸を酸化する物質)などがそうです。
なじみのない名前が入っています。巧妙な代謝(メタボリズム)のネットワークの違ったところで力を発揮していることが分かったプレーヤーですから、このような脈絡のない名前がついていますが、仲良く共同して、私たちの体のメタボリズムのバランスをとってくれているのです<図3>。
図3 糖尿病と代謝のシステム
このバランスは遠い昔から(それこそ飢餓の時代から)維持され、私たちの体の基を作っています。その意味で、「自然のバランス」が存在するのです。そして体質的に、遺伝的にと言っていいと思いますが、このネットワークの要の一部の弱い人が糖尿病や肥満になるのです。しかし、このような人は大勢はいません。多くの人は、糖尿病や肥満や高脂血症になりやすい体質を持っていても、影響は大きくありません。
しかし、糖尿病や肥満や高脂血症の人は増えています。生活習慣が大きく変化し、私たちの体に備わった「代謝の自然のバランス」が乱れてきた影響が大きいと言えます。
車は悪友 歩こう 筋肉を動かそう
ここに難しい問題があります。私たちは、作り上げられた社会(文明)の中につかり、逃れることはできないという点です。現代社会と糖尿病との関係をまとめると、<図4>のようになります。
図4 現代社会と生活習慣病