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糖尿病教室
糖尿病と動脈硬化(後編)
1.はじめに
2. メタボリックシンドロームを早く見つけるには
3. 糖尿病の人はいくつかの動脈硬化危険因子を持っています
4. 血管合併症予防のポイント
5. 炭水化物(糖質)制限食の勧め
6. 習慣になった運動は糖尿病を予防し、良くします
7. 糖尿病を治す
8. 代謝(メタボリズム)のシステムに即して
9. 「色即是空」というバランス
習慣になった運動は糖尿病を予防し、良くします
体全体、特に筋肉を動かす運動は血糖値を下げます。運動で筋肉に糖が取り込まれて血糖が下がります。先に説明しましたように、インスリンによって筋肉に糖が取り込まれ、血糖値が維持されており、糖尿病になるとインスリンによる糖の取り込みが落ちて血糖値が高くなります。
インスリンによる糖の取り込みと運動による糖の取り込みは別の経路で行われることが知られています<図1>。つまり、インスリンの働きが低下して筋肉に糖が取り込まれにくくなり、血糖値が高くなった糖尿病の人でも、運動で血糖値は下がります。
図1 インスリンと運動は違うメカニズムで筋肉へ糖を取り込みます。
しかし、運動だけで糖尿病を治すことはできません
詳しく言いますと、筋肉にある「AMPキナーゼ」という酵素が運動によって活発に働き、インスリンとは独立して、筋肉に糖を取り込みます。体全体を動かす運動(有酸素運動)をしっかりすると、1時間後に血糖値が下がるのはAMPキナーゼの働きによるものです。
では、短時間の有酸素運動でAMPキナーゼの働きが活発になり血糖値が下がるのは、糖尿病の状態(病態)を良くすることにつながるのでしょうか。現在、まだこのことは明らかになっていません。しかし、有酸素運動をしっかり1時間、2日に1回程度続けると、インスリンが働かない状態(インスリン抵抗性)が改善し、糖尿病が良くなり、悪くなるのを防いでくれます。
また、運動によって、予備軍の人(IGTの人)が糖尿病に進むのを予防できることも明らかになっています。つまり、習慣になった運動が糖尿病になるのを防ぎ、糖尿病の状態(病態)を改善します。運動を習慣にすることで、常にAMPキナーゼが活発に働くようになるのかどうかは明らかにされていませんが、足りないインスリンを運動が補い、糖尿病を良くすると言えそうです。
最近、運動をするとAMPキナーゼが活発に働き、筋肉に糖を取り込む役割を持っていることが明らかになっただけでなく、糖尿病の状態(病態)に強くかかわっていることがわかってきました。「前編」で脂肪細胞から分泌される「アディポサイトカイン」の中には糖と脂質の代謝を調節し、その異常が糖尿病になりやすいことと関係しているものがあると説明しました。その一つが「アディポネクチン」です。
アディポネクチンは肝臓と筋肉のAMPキナーゼを活発に働かせます。そのため、肝臓で中性脂肪が酸化(分解)され、筋肉に糖が取り込まれます。中性脂肪が分解されますから、肝臓で脂肪がたまらなくなり、その結果、インスリンがよく働くようになります。
また、AMPキナーゼは中枢神経系にもあり、食欲とエネルギー消費を調節していることも明らかになっています。ですから、この酵素は糖と脂質の代謝や食欲とエネルギー消費のバランスをとることで、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームの状態(病態)にかかわっています。もちろんAMPキナーゼを働かすアディポネクチンも。
次項の「糖尿病を治す」で、糖尿病治療のかぎとなる6項目をご紹介します。
日々、確実に実践してほしいことばかりです。