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糖尿病教室

糖尿病と動脈硬化(前編)

1.はじめに
2. 糖尿病になると血液中のブドウ糖(血糖)が高くなります
3. 糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病があります
4. 糖尿病の診断には空腹時の血糖と食後の血糖の両方が大切
5. 糖尿病の患者さんは増えています
6. 糖尿病は動脈硬化を進めます
7. 糖尿病の血管合併症としての細小血管症と大血管障害
8. 動脈硬化は糖尿病が軽い段階から進んでいます
9. 食後高血糖が動脈硬化を進めます
10. 内臓脂肪肥満が動脈硬化を進めます
11. 問題はメタボリックシンドローム
12. メタボリックシンドロームを持っている人は糖尿病と心筋梗塞のリスクが高い


問題はメタボリックシンドローム

内臓脂肪肥満があると、それを基に「耐糖能障害」「脂質代謝異常」「高血圧」「高尿酸血症」などが重なり合って起こる割合がきわめて高いことが知られています。
1人の人に<図11>に示すような病態(病気)が重なり合って起こってきます。
この状態を「メタボリックシンドローム」と呼んでいます。「メタボリック」は「代謝に関係した」という意味で、「代謝異常症候群」と訳すことができます。
<図11>
メタボリックシンドローム

病態をもう少し詳しく説明しますと、「耐糖能障害」は先に説明したIGT(負荷時耐糖能障害)と軽症糖尿病のこと、「脂質代謝異常」は血液中の中性脂肪が高くなることとHDLコレステロール(善玉コレステロールとして知られています)が低くなることを意味します。

当然のことですが、メタボリックシンドロームを構成する病態はすべて動脈硬化の危険因子です。また、この症候群では脂肪肝(NASH)と睡眠時無呼吸(SAS)を合併しやすくなります。この症候群に合併する脂肪肝には特徴があり、アルコール摂取とは関係がなく肝臓に脂肪がたまり、時には肝硬変まで進むと言われています。

運動不足、過食、飽食を背景に、日本でも欧米でもメタボリックシンドロームを持っている方が増加しています。アメリカでは、40歳以上の人の約24%がこの状態(病態)を持っていると報告されています。

では、なぜメタボリックシンドロームが起こるのでしょうか? 内臓脂肪肥満ではおなかの中に脂肪が過剰にたまるのですが、そればかりではなく中性脂肪をためた脂肪細胞の働き(機能)が異常になります。

近年、脂肪細胞は、中性脂肪をためるエネルギーの倉庫のようなものではなく、私たちの体にとって大切な働きをする多くの物質を作り、分泌していることがわかってきました。その中には、体脂肪の量を監視しているホルモン(レプチン)や、糖や脂質の代謝を調節してインスリンの働きを調節している物質(アディポネクチン)、高血圧や動脈硬化に関係している物質が含まれます<図12>。

また、脂肪細胞の中でステロイドホルモンを合成する酵素も重要であることが知られています。ですから、肥満になると、これらの生理活性物質(アディポサイトカインと呼ばれています。「アディポ」は「脂肪の」という意味です)や酵素の働きや量に異常がもたらされ、メタボリックシンドロームに代表される状態(病態)が起こることが容易にわかっていただけると思います。

図12 内分泌臓器としての脂肪 (JCI 106.2000より改変)
内分泌臓器としての脂肪


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