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糖尿病教室
糖尿病の食 "テーラーメード食事療法" のすすめ
1.はじめに
2. 炭水化物制限食との出合い
3. 栄養素の代謝を考える
4. インスリンの働きと炭水化物制限食の関係は
5. 理にかなっている炭水化物制限食
6. 炭水化物制限食の考えに落とし穴はないのか
7. 炭水化物制限食の要点‐糖の代謝から脂肪酸の代謝への変換
8. 糖尿病食としての地中海食
9. 糖尿病食としてのエビデンス
10. おわりに
栄養素の代謝を考える
「炭水化物や脂肪やたんぱく質などの栄養素は、複雑な段階を経て分解され、体のエネルギーをつくります。この過程を「代謝」と呼んでいます。
代謝の話は、かなり専門的な知識が必要で、やさしく説明するのはなかなか困難です。
そこで、内容が難しいと思われる方は
①炭水化物や脂肪やたんぱく質などの栄養素が代謝されてエネルギーになること。
②ただし、食後に血糖(血液中のブドウ糖)を上げるのは炭水化物だけである。
の2点を理解してくだされば、この章の残りの部分は読み飛ばしてもらって結構です。
糖の代謝と脂肪の代謝
糖の代謝と脂肪の代謝は密接に関係していますから、一緒に説明します。
代謝とは、栄養素が分解され、エネルギーが作られる過程のことを言います。
体のエネルギーはATP(アデノシン3リン酸)という分子から、一つのリン酸がとれてADP(アデノシン2リン酸)に分解されることによって産生されますから、代謝の過程は、栄養素が分解されてATPが作られることと言っていいでしょう。
<図1>のように、炭水化物(糖質)と脂肪と一部のたんぱく質が分解され、クエン酸回路と呼ばれる過程を経て、ATPが作られます。この過程は、細胞の中のエネルギーの工場であるミトコンドリアで行われます。 クエン酸回路が働くには、炭水化物(糖質)と脂肪が燃えて、中間体である「アセチル(Acetyl)CoA」ができることが必要です。
そして、クエン酸回路がうまく作動するには、まず糖が分解(解糖)されることが大事です。解糖と脂肪酸の分解(酸化とも言います)がうまくバランスがとれていることが必要です。「人はブドウ糖(グルコース)の炎で脂肪を燃やして生きている」という生化学の有名な格言は、このことを言っています。
たんぱく質の代謝
たんぱく質はどうでしょうか。たんぱく質は体の中でアミノ酸に分解され、それが筋肉などをつくる材料になります。アミノ酸からは、脂肪酸と糖とグリセロールがつくられます。
ですから、たんぱく質を摂取すると、時間を経て糖がつくられ、エネルギーができます。
しかし、食後に血糖を上げることはありません。
また、一部のアミノ酸から肝臓で糖が合成され(「糖新生」と言います)、必要に応じて肝臓から放出されます。空腹が長く続いても低血糖にならないのは「糖新生」のおかげですし、脳への糖の供給にもこの糖新生が大切な役割を果たしています。
ですから、三大栄養素から代謝の過程を経て、エネルギーが作られますが、食後の血糖を上げるのは炭水化物(糖質)だけです。
一部のたんぱく質は食後、しばらく時間がたってから糖になります。
脂肪は分解されても糖にはなりません。
<表4>と<図2>は、栄養素のうち、炭水化物が最も血糖に影響すること、
<図3>は炭水化物が最も早く血糖に変わることを示しています。
コラム 人のエネルギー源はなにか?
標準的な体格の人で、脂肪が10キログラム、グリコーゲンが250グラム蓄えられています。カロリーにすると脂肪が90,000キロカロリーで、グリコーゲンが1,000キロカロリーになり、脂肪の方が、グリコーゲンに比べて約90倍もエネルギーがあります。
人は脂肪から圧倒的に多くのエネルギーを得ています。では、ブドウ糖はどのようなときに使われるのでしょうか。それは、運動の時と、食後に血糖が上昇した時に筋肉で使用されます。インスリンの働きは、後者の場合に必要です。
ブドウ糖はごく限られた場合に、エネルギーとして使用されます。