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糖尿病教室

糖尿病と動脈硬化(前編)

1.はじめに
2. 糖尿病になると血液中のブドウ糖(血糖)が高くなります
3. 糖尿病は1型糖尿病と2型糖尿病があります
4. 糖尿病の診断には空腹時の血糖と食後の血糖の両方が大切
5. 糖尿病の患者さんは増えています
6. 糖尿病は動脈硬化を進めます
7. 糖尿病の血管合併症としての細小血管症と大血管障害
8. 動脈硬化は糖尿病が軽い段階から進んでいます
9. 食後高血糖が動脈硬化を進めます
10. 内臓脂肪肥満が動脈硬化を進めます
11. 問題はメタボリックシンドローム
12. メタボリックシンドロームを持っている人は糖尿病と心筋梗塞のリスクが高い


糖尿病は動脈硬化を進めます

糖尿病は、高血圧、高脂血症、肥満などとともに、生活習慣病の代表です。これらの生活習慣病は、動脈硬化が進むことによって起こる狭心症、心筋梗塞、脳卒中(脳梗塞)、閉塞性動脈硬化症(下肢の動脈硬化症)などの病気を引き起こしたり、進めたりします。
<図4>糖尿病は動脈硬化性疾患の重大な危険因子なのです。
糖尿病は動脈硬化性疾患の重大な危険因子
糖尿病は動脈硬化性疾患の重大な危険因子

日本で行われた調査でも、そのことが示されています。福岡市の近郊にある久山町の住民を対象にした調査と、多くの病院が参加して糖尿病の人の血管合併症の発症を調査したもの(JDCSと呼ばれている調査)が有名です。いずれの調査からも、糖尿病の人は狭心症、心筋梗塞、脳卒中にかかりやすいことがわかります<図5>。
図5 日本人も糖尿病患者での虚血性心疾患・脳血管疾患の発現率は高い
(曽根博仁ほか:最新医学59(1):99,2003より改変)
日本人も糖尿病患者での虚血性心疾患・脳血管疾患の発現率は高い

<図6>は、アメリカで行われた有名な調査の結果です。(1)高血圧(2)高コレステロール血症(LDLコレステロールと呼ばれる悪玉コレステロールが血液中に高くなる状態)(3)喫煙-はよく知られた狭心症、心筋梗塞の危険因子です。図の横軸はこれらの危険因子(リスクファクター)をいくつ持っているかを表しています。縦軸は、糖尿病の方と糖尿病でない方を比較して心筋梗塞の発症頻度を見ています。糖尿病の方は危険因子をいくつ合併しているかには関係なく、心筋梗塞の頻度が高いことがわかります。
図6 冠動脈疾患死亡とリスクファクター(Diabetes Care 12:537,1989より引用) 冠動脈疾患死亡とリスクファクター

もう一つ例を示します。<図7>はヨーロッパで行われた調査の結果です。糖尿病の方と糖尿病でない方を比較して、心筋梗塞を初めて発症する率と、心筋梗塞を初めて起こし再び起こす率を調べてみると、糖尿病の方は心筋梗塞を起こしやすい(約5.8倍)し、再発しやすい(約2.4倍)のです。注目したいのは、糖尿病でない方が心筋梗塞を再発する率と、糖尿病の方が心筋梗塞を初めて起こす率が同じだという点です。再発する率が高いのは、すでに冠動脈に動脈硬化が進んでいるので当然ですが、糖尿病の方が心筋梗塞を初めて起こす率と同じなのは驚きです。これらは多くのことを物語っています。つまり、糖尿病と糖尿病に関連したいろいろな異常そのものが動脈硬化を進めることです。
図7 糖尿病および非糖尿病における心筋梗塞の発症率の比較
(N Engl J Med, 339:229-234,1998より改変)
糖尿病および非糖尿病における心筋梗塞の発症率の比較

では、どのような異常が問題なのでしょうか。近年の研究から
(1) 糖尿病に伴う高血糖
(2) インスリンが働きにくい状態(インスリン抵抗性)
(3) インスリン抵抗性に伴う高インスリン血症
(4) 肥満(とくにおなかの中に脂肪のたまる内臓脂肪肥満)が動脈硬化を進めることがわかっています。
さらに、おのおのの病態に注目して、なぜそれらが動脈硬化を進めるのかわかりつつあります。これらの点を説明しましょう。


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