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糖尿病教室
『糖質制限食』 再考(補遺)
この文章は「糖尿病と食」と「糖質制限食 再考」の間に、自由に書いたものです。
不十分な箇所がありますが、上の二つの文章を補うものとして読んでいただければ幸いです。
1.はじめに
2.炭水化物(糖質)制限食の考えに出会う
3.栄養素の代謝を考える
4.インスリンの働きと炭水化物(糖質)制限食の関係について考える
5.糖質制限食とカロリー制限食 ― 大事な考えの相違
6.糖尿病の病態(糖尿病をきたす原因なり要因)を考えると、炭水化物(糖質)制限食は理にかなっています
7.炭水化物(糖質)制限食の考えに落とし穴はあるでしょうか
8.炭水化物(糖質)制限食の要点は糖の代謝から脂肪酸の代謝への変換です
9.糖質制限食と食の文明
10.糖質制限食のエビデンス
11.糖尿病食としての地中海食
12.ある糖尿病専門医の文章に出会う
13.オーダーメード糖尿病食
14,おわりに
インスリンの働きと炭水化物(糖質)制限食の関係について考える
糖尿病の患者さんは糖尿病の食事療法について、説明をうける度に、カロリーと言う言葉を散々耳にします。「一日の食事のカロリーを制限しなさい」と。定番の糖尿病の食事療法の原則は、カロリーを控え、一定にし、栄養素の配分については、炭水化物を5割から6割を摂り、脂肪を控えることです。
では、カロリーとは何でしょうか。カロリーとは、人の活動に必要な体内でつくられるエネルギーのことです。私たちは、ATPと言われる分子が、一つのリン酸がとれて、ADPになる時に、産生されるエネルギーを体の活動のために利用しています。もともと、カロリーは、血糖や高血糖とは全く別のことを意味しています。
では、インスリンの分泌や働きが低下している糖尿病の方が、「一日の食事のカロリーを制限しなさい」と教えられる理由はなんでしょうか。
ここでインスリンの働きを考えてみましょう。インスリンは全体としてエネルギーを貯える方向に働きます。筋肉や脂肪組織では、糖を取り込み、筋肉運動に備えます。
この働きが糖尿病になると障害されますから、血糖が高くなります。
脂肪組織では、脂肪の分解を抑え、中性脂肪を貯えるように働きます。
また、肝臓では、一部のアミノ酸から糖がつくられますが、この糖新生の過程を抑制し、作られた糖が不必要な時に、肝臓から放出されることを監視しています。
この監視の力が糖尿病になると落ちてきて、血糖を高めます。長期に渉る作用としては、アミノ酸からたんぱく質を合成し、核酸とDNAを合成するように促します。
このようにインスリンは「同化」(エネルギーを貯え、体の骨格を作る働き)のホルモンです。(しかし、一部の方に誤解されていますが、インスリンは肥満ホルモンではありません。その過剰な状態では肥満を助長するように働きます。たとえば、インスリン療法をされている患者さんで、適正な食事療法ができずに、インスリンが増えているような場合です)インスリンは、栄養素が燃えて、エネルギーが産生される過程である代謝(異化)には必要ありません。
ですから、糖尿病の方がカロリー制限を勧められるのは、エネルギーの産生に支障があるからではなく、単に、食べる量を控えることで、食後の血糖の上昇を抑えることが目的のようです。しかし、従来の糖尿病食では、必要とされるカロリーの中で、食後の血糖をあげる炭水化物を55-60%の比率で摂るように、教えられるわけですから矛盾しています。