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糖尿病教室
『糖質制限食』 再考(補遺)
この文章は「糖尿病と食」と「糖質制限食 再考」の間に、自由に書いたものです。
不十分な箇所がありますが、上の二つの文章を補うものとして読んでいただければ幸いです。
1.はじめに
2.炭水化物(糖質)制限食の考えに出会う
3.栄養素の代謝を考える
4.インスリンの働きと炭水化物(糖質)制限食の関係について考える
5.糖質制限食とカロリー制限食 ― 大事な考えの相違
6.糖尿病の病態(糖尿病をきたす原因なり要因)を考えると、炭水化物(糖質)制限食は理にかなっています
7.炭水化物(糖質)制限食の考えに落とし穴はあるでしょうか
8.炭水化物(糖質)制限食の要点は糖の代謝から脂肪酸の代謝への変換です
9.糖質制限食と食の文明
10.糖質制限食のエビデンス
11.糖尿病食としての地中海食
12.ある糖尿病専門医の文章に出会う
13.オーダーメード糖尿病食
14,おわりに
栄養素の代謝を考える
炭水化物や脂肪やたんぱく質などの栄養素は、複雑な段階を経て、分解され、体のエネルギーを作ります。この過程を「代謝」と呼んでいます。
また、「異化」とも言います。ですから、「糖の代謝」は糖が分解され、エネルギーが作られる過程のことを言います。そして、体のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)がADP(アデノシン二リン酸)に分解されることによって、作られますから、代謝の過程は栄養素が分解されて、ATPが作られることと言っていいでしょう。
糖は「解糖系」と呼ばれている経路でピルビン酸になります。そして、「クエン酸回路」と「酸化的リン酸化」と呼ばれている経路を経て、ATPが産生されます。
また、脂肪は体の中で、リパーゼと呼ばれている酵素で脂肪酸に変換されます。
脂肪酸は脂肪組織に取り込まれてふたたび脂肪として貯えられるとともに、脂肪酸は複雑な過程を経て、分解され、上に述べた二つの経路をへて、同様にATPが産生されます。脂肪酸が燃えるときは、糖が燃えるときに比べて、約2倍のエネルギーを産生します。脂肪が燃える方が効率はいいのです。脂肪は脂肪組織に蓄えられるとともに、燃えてエネルギーを産生します。最も有効なエネルギー源といっていいでしょう。
注意したいのは、脂肪酸は代謝されても糖には変換されませんから、脂肪を摂っても食後に血糖は高くなりません。
タンパク質はどうでしょうか。タンパク質は体の中で、アミノ酸に分解され、それが筋肉などの合成の材料になります。アミノ酸からは、脂肪酸と糖とグリセロールが作られます。ですから、タンパク質を摂取すると、時間をへて、糖がつくられ、ネネルギーができます。しかし、食後に血糖を上げることはありません。また、一部のアミノ酸から肝臓で糖が合成され(糖新生と言います)、必要に応じて肝臓から放出されます。空腹が長く続いても、低血糖にならないのは、また、脳の糖の供給にもこの糖新生が大切な役割をはたしています。
ですから、三大栄養素からは代謝の過程を経て、エネルギーが作られますが、食後の血糖を上げるのは炭水化物(糖質)だけです。一部のタンパク質は食後しばらく時間がたってから糖になります。脂肪は分解されても糖にはなりません。