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糖尿病教室

『糖質制限食』 再考(補遺)

この文章は「糖尿病と食」と「糖質制限食 再考」の間に、自由に書いたものです。
不十分な箇所がありますが、上の二つの文章を補うものとして読んでいただければ幸いです。

1.はじめに
2.炭水化物(糖質)制限食の考えに出会う
3.栄養素の代謝を考える
4.インスリンの働きと炭水化物(糖質)制限食の関係について考える
5.糖質制限食とカロリー制限食 ― 大事な考えの相違
6.糖尿病の病態(糖尿病をきたす原因なり要因)を考えると、炭水化物(糖質)制限食は理にかなっています
7.炭水化物(糖質)制限食の考えに落とし穴はあるでしょうか
8.炭水化物(糖質)制限食の要点は糖の代謝から脂肪酸の代謝への変換です
9.糖質制限食と食の文明
10.糖質制限食のエビデンス
11.糖尿病食としての地中海食
12.ある糖尿病専門医の文章に出会う
13.オーダーメード糖尿病食
14,おわりに

炭水化物(糖質)制限食の考えに出会う

炭水化物(糖質)制限食は高雄病院理事長の江部康二先生が提唱された糖尿病の食事療法です。先生は、「主食を抜けば糖尿病は良くなる!」(2005年 東洋経済新報社)という本を書かれ、話題になりましたから、知っておられる方が多いと思います。私も読んでみました。なぜなら、私が診ている患者さんの多くが従来の食事療法を守っておられるのですが、晩御飯にご飯やうどんを食べると、翌朝の血糖が高くなるのを不思議に思っておられたからです。

最初は、私は本の表題に抵抗を感じました。なぜなら、私たちは、総カロリーを制限し、約半分のカロリーは炭水化物から摂り、脂肪摂取をひかえることが原則であり、食後の血糖が高くなるのには、糖尿病の薬やインスリンを用いて、下げればいい、これが糖尿病の治療だと考えていたからです。しかし、江部先生の発想は、まったく逆でした。食後に血糖を上げるのは、炭水化物(糖質)だけだから、極力、献立から、ご飯やうどんやパンを控えれば、血糖は上がらない、血糖のコントロールは良くなるという考えです。

炭水化物(糖質)制限食の要点は、
1)一日の食事から、極力、ごはんやうどんやパンなどの精製された炭水化物は、控える。これは、徹底しており、実際の献立は、お昼ごはんに玄米を少量食べるだけです。
2)脂肪やタンパク質は制限なく食べてもよい。ですから、この療法では従来の主食と副食と言う考え方はなくなっています。
3)炭水化物を食べるにしても、精製度の低い炭水化物を食べる。たとえば、玄米や全粒粉小麦などです。
4)脂肪やタンパク質は制限なく食べてもいいのですが、できるだけ、魚貝や肉や納豆やお豆腐やチーズを食べる。この点はのちに触れる地中海食と似ています。
5)油脂は、オリーブオイルや魚の脂に豊富に含まれているω3多価不飽和脂肪酸をとる。その代表はEPAやDHAです。この点も地中海食に似ています。
6)お酒は適度に飲んでいいが、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒がよい。ビールや日本酒などの発酵酒はすこし糖分が含まれるので勧めない。
このような内容の食事療法です。(この食事療法を始められた患者さんはおしなべて空腹時血糖やヘモグロビンA1cは良くなっています。)

私は、最初は驚きました。わたしたちは、炭水化物(糖質)を摂取し、食後に高くなる血液中のブドウ糖(血糖)をインスリンの働きで、筋肉や脂肪に取り込み、体の活動に必要なエネルギーを蓄えなければならないというのが医学の常識なのですから。この考えのどこが間違っているのでしょうか。私ははっとしました。この常識は健常な糖尿病でない方にはあてはまります。
そして、現在の糖尿病の治療の考えもこの健常者にたいする常識がもとになっているのだと。しかし、糖尿病の方の病態は違っています。この相違を十分考えて、糖尿病の食事療法を考えないといけないと思い至り、改めて炭水化物制食を考えてみました。


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