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糖尿病教室
『糖質制限食』 再考
1.糖質制限食の疫学(コホート研究)と臨床研究
2.糖質制限食の定義 ― 糖質をどこまで制限するか
3.糖質制限食の適応と制限
糖質制限食の適応と制限
糖質制限食は2型糖尿病の患者さん一般に有効で、有益です。
糖質制限食だけで血糖コントロールが良くなればいいのですが、すべての患者さんがそうではありません。グルコース応答性インスリン分泌障害がある程度ある患者さんには薬物療法(経口剤、インスリン療法)が必要になります。
(グルコース応答性分泌障害と糖質制限食の有効性との関係の検討が今後の課題です)どのよう組み合わせが、理にかなっているでしょうか。
SU剤は糖質制限食との関係では、低血糖をきたすために、できるだけ使用しないことが原則と思います。ただ、インスリン分泌障害の程度により、使用する場合はできるだけ少量を使用すべきです。インスリン抵抗性改善薬(チアゾリジン誘導体、メトフォルミン)は2型糖尿病では、インスリン抵抗性を伴いますから、糖質制限食の効果を補うことができると思います。インクレチン製剤(DPP-4阻害薬とGLP-1製剤―注射薬―)どう考えたらいいでしょうか。
インクレチンは経口摂取された糖質の量に応じて、インスリン分泌を促進する薬剤ですから、やはり、糖質制限食の効果を補うことができる薬と考えられます。低血糖を起こしませんし、ある程度、インスリン分泌障害進んだ方に、この食事と併用することは、有効であり、今後の2型糖尿病の治療戦略として検討されていくと思います。(この場合、さらに持効型インスリンをさらに併用するやり方も検討されてくるでしょう)
グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は、糖質が制限されている場合でも、糖の吸収はなだらかになりますから、併用の効果は期待できます。
インスリン分泌障害が進みインスリン療法を行っている2型糖尿病の患者さんが糖質制限食を行う場合、注意が必要です。
超速効型インスリンを、一日2回から3回食事の直前に打っておられる方は多いのですが、当然、摂取する糖質の量がカロリー制限食に比べて大幅に減るわけですから、
インスリン量の調整をしなければなりません。私は、まず糖質量を固定し(たとえば、一食100gから始め150gで固定)、カーボカウント法に準じて、インスリン量を決まるのがよいと考えますが、検討課題です。
この点は充分に主治医の先生と相談してください。このことは、1型糖尿病の方で、強化インスリン療法をされている方にも当てはまります。また、1型糖尿病の患者さんの中には、成長期の方が多くおられますから、その方が、どこまで糖質を制限したら、成長に問題がないのか、十分検討されていませんから、慎重に考える必要があります。
糖尿病の合併症に腎症があります。腎不全がある程度進むと、蛋白質制限食が食事療法として必要になります。腎症を合併した糖尿病の方が糖質制限食を行うには注意が必要です。糖質制限食では糖質が減る反面、蛋白質と脂肪の摂取量が増えます。
灰本先生方が調査をされています。灰本先生方は、カロリー制限食、糖質1食制限、2食制限、3食制限で糖質、蛋白質、脂肪、総カロリーを比較されています。
興味があるのは、当然、糖質が減り、蛋白質と脂肪の摂取量は増えるのですが、
特に2食制限と3食制限で差は顕著なのですが、脂肪の摂取量は大幅に増え、
蛋白質の摂取量は増えるのですがゆるやかなのです。
お米にも蛋白質は含まれており、糖質を減らした分、蛋白質も減ります。糖質制限食でどの程度、蛋白質の摂取量が増えるのか検討課題です。
また、腎症には、微量アルブミン尿のステージ、顕性蛋白尿のステージ、腎不全のステージあり、どの段階で蛋白質制限をどの程度行うべきなのか、腎臓病専門医との協議が必要です。